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俳句通信

今月の俳句

蛇となる途中の廊下拭き磨く

4月
竹岡一郎  『けものの苗』(ふらんす堂)より

雑巾がけをしているうちに、廊下が蛇に変わる。いや、廊下の途中で人の方が蛇になるのかもしれない。もうすぐ蛇になると思いながら廊下を拭いているほうがいい。ぴかぴかに磨いた廊下には、蛇になりかけている自分の顔が映っていて、もう人ではいられない悲しみがこみあげてくる。
でも蛇になってしまえば、人であった記憶はきっと消えている。
作者はその消えた記憶を手繰り、懐かしんでいるのかも。

過去に紹介した俳句

六月の脳より高く鉄アレイ

4月
小久保加世子 『アングル』(金雀枝舎)より

間もなく梅雨の時期を迎える六月は、空気も湿り気を帯びてなんとなく鬱陶しい。体も心も鈍く感じて、今ひとつやる気が出ない。そんな重たい気分を跳ね返すように、作者はダンベル体操をしている。鉄アレイを握り、天に向かって腕を突き上げる。右、左、右、左……。俳句は省略の文学。頭を「脳」と表現し、腕の上げ下げを「高く鉄アレイ」とだけ表現している。それで十分に動作が目に見えてくる。「六月の脳」には、この季節ならではの憂鬱が感じられる。脳と鉄アレイの取り合わせが面白い。

プレゼンター

柴田千晶

詩人、俳人、出版工房・金雀枝舎代表

神奈川県横須賀出身。
現在作家として活動するほか、並行してカルチャースクールにて講師活動中。

  • 著書
    詩集「空室」、「セラフィタ氏」、「生家へ」ほか
    句集「赤き毛皮」
    共著「尖鋭現代詩選」、「超新撰21」、「再読・波多野爽波」

  • 受賞歴
    第5回 現代詩ラ・メール新人賞
    第40回 横浜詩人会賞(詩集「セラフィタ氏」)

  • 所属
    日本文芸家協会・シナリオ作家協会
    俳人協会・俳句誌「街」同人
    日本現代詩人会・横浜詩人会
2024年11月
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小笠原学園
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カルチャースクール
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